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「2つの老い」を食い止め、団地を活性化!管理会社と協力した2つの取り組み【①リノベーション編】

近年、マンションで大きな問題となっているのが、建物の老朽化と居住者の高齢化という、いわゆる「マンションの2つの老い」です。建物の老朽化は修繕や補修を適切に行うことで遅らせることができますが、居住者の高齢化は年々深刻になっていきます。そんななか、若い世代の移住を促進しながら、高齢者世帯の住環境を整える取り組みを始めた団地があります。
⇒【②住み替え編】はこちら

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深刻化する団地の2つの老いと空き家問題

図2 マンション管理組合を悩ます「2つの老い」問題。建物の老朽化と居住者の高齢化が進み、マンションの管理がますます大変になるといわれています。特に、高度成長期を中心に建てられた公団タイプといわれている団地では「2つの老い」の問題がより深刻で、エレベーターがないことや、駅から遠い物件が多いことなどが、空き家住戸が増えている一因となっているようです。

 

ただ、広大な敷地に余裕のある建築計画がたてられることや緑の豊かさなど、団地でしか得られない利点もあり、近年ではそれらを上手に利用しながら団地を再生する事業が各所で進行中です。「稲毛海岸三丁目団地」もその一つ。千葉県美浜区にある27棟、総戸数768戸の大型団地で、住環境の豊かさに加え、JR京葉線 稲毛海岸駅から徒歩10分というアクセスの良さも兼ね備えています。

 

しかし、築52年という高経年団地のため「2つの老い」問題が深刻になっていくなかで、5階建てながらエレベーターがないなど生活のしにくさや住みにくさがいわれ始め、空き家住戸が目立ってきていました。過去には建て替えの話が話題・議題に上ったこともありましたが、団地ならではの合意形成の難しさ(団地管理組合で5分の4以上の賛成、建物ごとに3分の2以上の賛成が必要)もあり、結局は話が流れてしまったそうです。

 

 

 

3者が協力し、空き家住戸を若者向けにリノベーション

図1そこで相談したのが、管理会社の日本総合住生活株式会社(以下、JS)と地域再生に取り組むNPO法人(ちば地域再生リサーチ)でした。このNPO法人は、団地が位置している海浜ニュータウンを拠点として、住宅のリフォームや福祉事業などによって地域再生活動を行っている団体です。以前から団地再生に関心の高かった管理組合が、このNPO法人とJSに相談したのがきっかけでした。

 

早速話し合いを進める中で、「空き家住戸に若い世代を呼び込む」という方針を定めました。管理組合としては、建て替えをしないと決めた時点で「2つの老い」の一つである建物の老朽化は修繕等でしっかり対処していくことになります。そのうえで空き家住戸に若い世代を誘致することができれば、空き家住戸と居住者の高齢化という問題が一気に解決できると考えました。事業のスキームは、JSが空き家住戸を買い取り、若い世代向けにリノベーションを施して賃貸に出す。管理組合は空き家住戸の情報提供や賃貸居住者への支援を実施。NPO法人は地域情報や知見の提供、改修の設計を手がけるというものです。

 

最初の1戸は、DIY(※1)ができる家としました。DIY市場は年々広がっており、一定のニーズがあります。また、DIYをする人は自ら生活をつくっていける人。団地の活動にも積極的に参加してくれるのでは? という期待もありました。シンプルな内装に最低限の設備を設け、木部のくぎ打ちや塗装などを可能にし、DIYに取りかかりやすい物件としています。

⇒DIYの様子はページ下のコンセプト動画をご覧ください。

 

 

告知はSNSで。7部屋がすぐに埋まり、若い世代が入居

図3しかし、「DIY賃貸」とひと口にいっても、どんなDIYをしたらいいのかわからないという人も多いに違いありません。そこで、設計を担当した会社の紹介で、西千葉を拠点に生活実験家として活躍し、DIYの工作室などを運営している山形さんに手伝ってもらい、モデルルームをつくることにしました。また、それに伴ってDIYをテーマにしたワークショップを開催。こちらも山形さんに講師をお願いしています。団地の良さをより多くの人に知ってもらうきっかけにするため、このワークショップは団地入居者だけでなく、広く一般からも参加者を募集しました。物件情報はもちろん、ワークショップの告知などはSNSやこのプロジェクトのHPなどを使って発信。団地に入居してもらいたい若い世代に直接アピールする媒体を選んでいます。

 

その他、床の下地材などを内装材として再利用した「エコリノベ賃貸」、L字型の畳部屋を障子で仕切る「和テイスト賃貸」、可動間仕切りなどを活用して家族構成の変化にも柔軟に対応する「家族が育つ賃貸」など、全部で4タイプ7戸のリノベーションが完了。どの物件もすぐに入居者が決まり、現在は若い世代の夫婦が暮らしています。入居後も交流会などを積極的に開催し、団地の環境になじんでもらえるような工夫を重ねてきました。

 

4図ちなみに、先述のDIYディレクターである山形さんも、その後、この団地に移住することを決めました。初めて部屋に足を踏み入れたとき、山形さんは、「想像していた団地の部屋とのギャップに驚き、どんな風に手を入れようかとワクワクした」と言います。モデルルームづくりやワークショップで団地に関わるうち、この環境が気に入り、部屋を借りることにしたそうです。「窓が両側にあるから風が抜けて気持ちいい。緑豊かな屋外空間や車通りの少ない静かな環境などもこの団地の魅力です。コロナ禍での在宅期間中も、壁を塗り替えてDIYを楽しんでいます。団地はリモートワーク向きだと思いますよ」と団地の魅力を教えてくれました。

 

※1)Do It Yourself。手芸や手作りインテリア、日曜大工などに限らず、何でも“自分自身でやろう”という考え方。DIYの様子は下記の動画をご覧ください。

 

 

「稲毛海岸三丁目団地」コンセプト動画

 

⇒ 【②住み替え編】はこちら

 

概要(取材年月:2020年10月)
  • 建物名:稲毛海岸三丁目団地
  • 所在地:千葉市美浜区
  • 階数 :27棟・5階建て
  • 総戸数:768戸
  • 竣工年:1968(昭和43)年
  • 管理形態:一部委託
  • 管理会社:日本総合住生活(株)
  • 総会開催:─
  • 役員数 :─
  • 役員任期:─

マンションライフをサポートする関係団体(リンク)