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助成金を上手に利用して、耐震改修と大規模修繕工事に成功!【後編】

4年に及ぶ耐震補強・大規模修繕工事プロジェクトチームの話し合いを経て、ようやく動き出した「ルネ吉祥寺」の耐震化計画。「命を守る耐震化」を最低限の目的と定義したことで、話し合いの進度が上がり、目標や予算が着々と決まっていきました。
前編はこちら

その他

目的を単純明快にして、耐震化が大きく前進

PA310073耐震化の目的を最低限の「命を守る耐震化」とわかりやすくしたうえで、「ルネ吉祥寺耐震補強・大規模修繕工事プロジェクトチーム(以下、PT)」は、工事の目標を5つに定めました。

1 IS値0.6を満たす

2 東日本大震災程度の揺れに耐え、人命を守ることができる耐震性を確保

3 住人の生活に大きな負担のない工事

4 マンションの美観を損なわない

5 耐震補強と大規模修繕を同時に行う(足場を共有するため3,000万円強のコスト削減効果がある)

 

さらに、大規模修繕込み・責任施工方式で予算5億円以下という予算目標も立てました。耐震補強工事と大規模修繕でそれぞれ2億5千万円という試算です。「これまでのPTの尽力で、耐震補強について援助が受けられそうだと分かっていたことが大きかった。追加徴収も借り入れもなしで2つの工事をするには、助成金なしでは予算を組むことも難しかったと思います」と副理事長の新村さんは言います。

緊急輸送道路に面した建物の耐震化推進条例とは?

OLYMPUS DIGITAL CAMERAところで、ルネ吉祥寺が予定していた耐震補強への助成金とは、「東京における緊急輸送道路沿道建築物の耐震化を推進する条例」に基づくものです。震災時に避難や救助活動等の大動脈となる幹線道路のことを緊急輸送道路といい、これらが建物の倒壊などによって利用できなくなることのないよう、緊急輸送道路に面した建物には耐震診断実施の義務と耐震改修の努力義務が課せられ、それぞれに助成金が下りることになっています。

 

ルネ吉祥寺は、商業ビルとの一体開発でできたマンションです。井の頭通りに面した商業ビルとは一つの構造体であり、そのビルは上記の条例を活用して、数年前に耐震改修工事を終えていました。また、武蔵野市は住人の7割以上がマンション住まいで、耐震化を強く推進していますが、なかなか進んでいないのが現状で、「耐震化の相談について前向きな雰囲気があった」と理事長の足立さんは言います。足立さんが会長を務めていた防災会で、市の防災課と接点を有していたことも功を奏しました。結果的に、耐震補強にかかった費用のおよそ9割を助成金で賄うことができたのです(※)。

 

これらの条件をもとに4社に見積を依頼し、結果、予算内ですべての条件をクリアする案を出した会社に工事を依頼する方向で話を進めました。ちなみに、以前検討していたものと今回とでは、工法も全く異なるものになったそうです。“IS値0.6をクリアすること”を最低ラインとして単純化したため、①単独柱に近い状態の柱を補強する、②柱梁の構造体への悪影響を少なくする外部スリットを入れる(詳細な施工方法は異なりますが、以前ご紹介した「ゼームス坂パークハウス」と同じような部分スリットを採用)、という2つの工事が大きなポイントになりました。

 

情報のシェアに神経を使い、みんなが満足する工事に

理事会では、同年12月に臨時総会を開き、工事の発注会社が承認されました。また、その後も総会のほか、工事説明会を何度か開催し、ドアや床の塗装の色などについてのアンケートを行うなど、住人との情報共有に努めました。「理事会としては、みんなが情報をシェアすることに最も神経を配りました」と足立さん。説明会では、理事のひとりである建築士から「もっとしっかりと耐震化を図った方がいいのでは」という意見も出ました。公の場で検討の意見が提示され徹底的に議論を重ねたことで、住人間で「これが今できる精一杯の耐震化なんだ…」という共通認識を持つことにつながりました。

 

2018年9月から始まった工事の間は、施工会社が工程表のプリントを作って配り、さらにエントランスにホワイトボードを置いて日々更新(ホワイトボードのイメージは以前紹介した「コープ南砂」と似ているそうです)。ほとんどの住戸の外側にスリットを入れたので思ったよりも騒音が出て、多少苦情もあったそうですが、施工会社などが対応してくれたそうです。ホワイトボードの前では、人々が足を止めておしゃべりする姿もみられ、よいコミュニケーションツールにもなりました。何か気になることがあると、すぐに現場に聞きに行く人もいたということです。

 

芝が禿げ、土が見えてしまっていた中庭も、助成金のおかげで手を回すことができました。「お金がなくてずっといじれなかったのが中庭。『いつかお金をためてきれいにしよう』と言っていたので、きれいになって本当にうれしい」と足立さん。「武蔵野一の枯山水!」と誇れる美しい中庭に生まれ変わりました。「このマンションは、建物と一緒に住人も年をとって、どんどん平均年齢が上がっています。でも、みんな気心が知れていておかしな文句も一切出ない。今回の工事も大多数の人が大満足、と言ってくれています」と新村さん。「宝の山」と称されたマンションが、また一つその価値を上げました。

 

 

)「ルネ吉祥寺」の場合、国・都・市それぞれから助成金があり、割合としては市が最大でした。負担割合や負担額等については、お住まいの区市町村にお問い合わせください。

概要(取材年月:2019年10月)
  • 建物名:ルネ吉祥寺
  • 所在地:東京都武蔵野市
  • 階数 :14階建て
  • 総戸数:155戸
  • 竣工年:1978(昭和53)年
  • 管理形態:委託管理
  • 管理会社:日本住宅管理(株)
  • 総会開催:毎年5月
  • 役員数 :12名
  • 役員任期:1年

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