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管理員の機転と常日頃の住人との交流が奏功し、振り込め詐欺被害を未然に防止!

近年巷を騒がせ問題視されているにもかかわらず、一向に減る気配のない「振り込め詐欺」。高齢者の被害は逆に増加傾向にあり、孫や子どもなどの身内を装ったものから行政機関の名をかたるものまで、その手口は年々巧妙化しています。これを受けてマンション管理会社では、マンション担当者や管理員に対して警察等と連携した講習を実施。アドバイザーとして各マンションで注意喚起などを行うところも出てきました。アドバイザーとなった管理員が、実際に振り込め詐欺を未然に防いだ事例をご紹介します。

防犯・セキュリティー

右手に固定電話、左手に携帯電話を持った居住者

P3060030JR「新小岩」駅から徒歩10分強、小松川境川親水公園沿いにある「ライオンズマンション親水公園」の管理員である田中さんは、定時になったため着替えを終えて帰ろうとしていた時、不思議な光景を目にしました。管理員室の前にあるエレベーターホールにふと目をやると、居住者の女性が携帯電話で話をしながらエレベーターを降りて来ます。しかし、その反対側の手にはなぜか固定電話の子機が握られているのです。

 

しかも、その女性は不安げにその場を行ったり来たりしています。「なんだかいつもと様子が違う」と感じた田中さんは、すぐに管理員室を出て「どうかしましたか?」と声をかけました。女性がいうには、「息子が勤務する会社の方と待ち合わせをしているんです。今から現金150万円を届けなきゃいけなくて……」とのこと。これは、もしかして振り込め詐欺では?とピンときた田中さん。女性にその旨を伝え、一緒に近くの交番へと向かいました。

 

交番では簡単な事情聴取が行われ、女性が事の顛末を話します。それによると、息子さんからの電話で「会社のお金を運用したが、監査が入るためすぐにお金を返さなければならなくなった」とのこと。さらに、その上司と名乗る男からも続けて電話があり、「今手元にあるお金だけでもでいいから持ってきてほしい」というので、親水公園にある東屋で待ち合わせをしたというのです。

 

それを聞いて、警察でも振り込め詐欺被害の可能性が高いと判断。偽物の紙幣を持って女性と警官1名が東屋へ行きましたが、待ち合わせ時間を過ぎていたためかお金を受け取る人は来なかったそうです。警察としてもやはり振り込め詐欺の電話だったと判断したということです。もしも田中さんが女性に気づかなかったら、声をかけていなかったら、と思うとゾッとします。

 

警視庁の講習を受け、管理員が詐欺被害防止アドバイザーに

DSC_1195田中さんがすぐに振り込め詐欺に気づいたのには理由があります。というのも、当マンションの管理を委託されている管理会社・(株)大京アステージでは、2016年の10月から、警視庁より「振り込め詐欺被害防止アドバイザー」を受嘱しており、田中さんもその講習を受けていたのです。

 

「振り込め詐欺被害防止アドバイザー」とは、社会問題となっている振り込め詐欺の被害防止に協力するため、管理員やマンション担当者などが警視庁から特殊詐欺の被害状況やアドバイザーの役割などについて講習を受け、担当するマンションで居住者に対して声掛けや情報提供などの啓発活動を行うものです。

 

警視庁の担当者からは、「マンションの管理員は入居者との距離が近く、マンション内の高齢者世帯も把握している場合が多いため、日頃の会話を通じて特殊詐欺への注意喚起をしていただくことを期待している」と話がありました。また、マンションの1室が詐欺犯罪者たちのアジトになっているケースもあるため、やはりマンションの空き家状況などを知っている管理員ができることは多いと警視庁では考えているそうです。

 

ライオンズマンション親水公園のケースでも、田中さんはアドバイザー講習の時に聞いた事例と今回の女性の話がよく似ていたため、「もしや」と思ったということでした。振り込め詐欺は、詐欺と気づいた時にはすでに犯人の姿はなく、足がつきにくい犯罪であるため、水際で食い止めることがとても重要です。特に近年では、高齢者のタンス預金を狙って犯人が現金を自宅に取りに来る手口が増えていることから、生活の場であるマンションで直接居住者に被害防止を訴えることの効果は大きいのです。

 

管理員の日頃のコミュニケーションが被害を防いだ

P3060027ところでこの時、田中さんはなぜ女性が普段と違うことに気づいたのでしょうか。また、被害女性はなぜ田中さんに声をかけられ、すべてを包み隠さず話したのでしょうか? それは、田中さんが管理員として普段から心がけていることと大いに関係があります。

 

田中さんはライオンズマンション親水公園に勤務して11年。築32年のマンションは、竣工時から住んでいる人も多く、65歳以上の住人が6割近くいるなど高齢化しています。そのため、田中さんは高齢の居住者を見かけたら、挨拶だけでなくゴミ出しの際に世間話をするなど必ず声をかけるようにしています。また、単身高齢者の世帯を把握するため、マンション内の訃報についても気を配っています。

 

今回の被害女性は70代。息子さんはすでに独立し、病気がちだったご主人を数カ月前に亡くして、マンションの1室に一人暮らしをしている状態でした。「一人暮らしの方は話し相手がいなくてさみしい思いをしている方も多い。私と話すことで気が晴れてくれればと思い、なるべくお付き合いするようにしています」と田中さん。常日頃から居住者をよく見て、コミュニケーションをとっていたことで、女性の異変を察知することができたうえ、女性も身内の話をさらけ出すことができたのです。

 

この一件のあと、マンション管理組合理事会では事例を共有し、注意喚起の意味も込めて居住者全員に伝えました。田中さんは居住者の方から、「管理員さん、すごいことをしたね」「管理員さんがいてくれるから心強いです」とうれしい言葉をかけられたそうです。また、管轄の警察署からマンションにパトカーが迎えに来て、警察署長から感謝状を授与されたということです。

 

今回の事例は、ひとりの住人を犯罪被害から救っただけでなく、今後起こり得る多くの犯罪をも未然に防止する貴重な事例になったようです。

概要(取材年月:2018年03月)
  • 建物名:ライオンズマンション親水公園
  • 所在地:東京都江戸川区
  • 階数 :10階建て
  • 総戸数:62戸
  • 竣工年:1985(昭和60)年
  • 管理形態:全部委託
  • 管理会社:(株)大京アステージ
  • 総会開催:毎年7月
  • 役員数 :9名
  • 役員任期:1年・輪番制

マンションライフをサポートする関係団体(リンク)