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黎明期に建てられた歴史的マンションが建替え スムーズな合意形成を可能にした〝君子のコミュニティ〟とは?

日本で「分譲マンション」が登場したのが1950年代。それから60年以上を経て、当時の面影を強く残した歴史的マンションの建替えが行われようとしています。今年建替え決議が成立し、解体。2年後の2019年に新しく生まれ変わるこのマンションでは、どんなコミュニティが育まれ、どのように合意形成に至ったのかをレポートします。

その他

日本初の民間分譲マンションが建替え

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今、JR四谷駅前は外堀通り沿いに面して高層ビルの建設が計画され、再開発の波が押し寄せています。そんな大通りから少し入った場所に、日本のマンション界にその名を刻む歴史的マンション「四谷コーポラス」があります。1956年に建てられ、築61年を迎えるマンションで、「日本で初めて民間企業が分譲したマンション」といわれている建物です。

 

そんな四谷コーポラスが、建替えをすることになりました。今年3月に管理組合による建替え決議が成立、5月に全員合意となり、9月から解体工事が始まっています。

 
建替えに向けた話し合いが始まったきっかけは、東日本大震災。大きな揺れで建物の耐震性能への不安が顕在化したのです。また給排水管の老朽化などの問題もあったため、併せて建替えを中心に検討されることになりました。敷地規模が限られた小規模マンションの建替えであるため、床面積が大きく増えることがないのはわかっていましたが、便利な立地や住まいへの愛着から、区分所有者の大半が新しい住戸を再取得する予定です。

 

マンション黎明期の面影を残す四谷コーポラス

③DSC_0065四谷コーポラスが建設された1956年は、洗濯機と冷蔵庫、白黒テレビが「3種の神器」といわれていた時代。米1kgが約80円、大手企業の大卒初任給が1万円、公営住宅の広さが12坪といった時代に、28戸のうち24戸が3LDK23坪、1戸233万円という価格で販売されました。

メゾネットタイプ、洋風や和風が混在した自由設計、全戸にダストシュートや電話機を設置という、当時としては画期的なマンションでした。また、割賦販売を初めて導入したマンションでもあり、当時の購入者は大学教授や弁護士、大手企業の役員などがほとんどだったそうです。

1962年の区分所有法施行以前の建物でありながら、共用部分も含めた販売方式、民間の管理会社による管理、管理組合の設立など、現在の分譲マンションの原型のような存在だったといえます。管理規約も最初からつくられており、これは売主である日本信用販売(株)がアメリカ大使館に出向いてマンションの管理の仕方を学んだ記録が残っているということです。

規約や管理組合、管理会社の存在などから、長年にわたってしっかりとした管理がなされ、管理状態も良好な四谷コーポラス。立地の良さ、他にない住居の広さなどから多くの居住者が手放さずに所有し続けた結果、二代目三代目まで続く長く良好なコミュニティが育まれてきました。しかし、建物・設備の劣化は避けられませんでした。前述のとおり、排水管の水漏れが多発したのです。

そこで、大規模修繕の時期に合わせた2006年ごろに再生の検討を始めましたが、費用等の問題から話は立ち消えに。その後、2013年に区の補助金を利用して耐震診断をすると耐震性に問題あり、とされ、大規模修繕、耐震補強、給排水管の更新をすべて行うには建替えが適当とのことで、建替え推進委員会が発足したのです。

スムーズな合意形成の背景は? カギを握った3つのコミュニティ

④DSC_0053その後、信販コーポラス(株)の元社員であった川上さんを顧問として迎え、検討を継続。6社による事業協力者の選定コンペを行いました。オープンな採点方式で旭化成不動産レジデンス(株)が事業協力者に選ばれ、居住者一人ひとりに対する個別面談も行われます。この個別面談は、居住者同士だと話しにくいこともあるだろうと、川上さんが担当しました。そして、2017年3月に建替え決議が成立し、四谷コーポラスは新しく生まれ変わる道を歩み始めたのです。

 
「容積が増えない建替えであるにもかかわらず、合意形成までがスムーズだったのは、居住者の方々の協力のおかげ」と川上さんはいいます。「横のつながりが非常に強く、必要書類をすぐに取り寄せてくれるなどみなさん非常に強力的でした」。また、スムーズな合意形成の理由を旭化成不動産レジデンス(株)の大木祐悟さんはこう分析しています。

 

 

⑤DSC_0008「1つ目は母親たちのコミュニティ。川上さんを居住者のみなさんに紹介したのは委員長の奥様です。一緒に子どもたちを見続けてきた母親同士の信頼関係が、川上さんの存在を受け入れやすくしたのだと思います。2つ目はリーダーの存在。同じ理事長が長く続いた時期があり、その方を中心にまとまりがありました。3つ目は〝君子のコミュニティ〟とでもいうのでしょうか。仲が良すぎると何かあった時かえって溝が深くなってしまうことはよくあるのですが、こちらのみなさんはほどよい距離感でつながっているのが良い結果につながったのだと思います」。

 

居住者の引っ越しも無事完了し、新しい建物の竣工予定は平成31年(2019年)です。四谷コーポラスは、地上5階建て、総戸数28戸の建物から、地上6階地下1階建て51戸のマンションに生まれ変わります。

概要(取材年月:2017年09月)
  • 建物名:四谷コーポラス
  • 所在地:東京都新宿区
  • 階数 :5階建て
  • 総戸数:28戸
  • 竣工年:1956(昭和31)年築
  • 管理形態: -
  • 管理会社: -
  • 総会開催: -
  • 役員数 : -
  • 役員任期: -

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