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四半世紀かけ建替えを実現!(上)

暖冬の影響で小春日和が続いた2015(平成27)年12月、京王線桜上水駅に程近い「桜上水ガーデンズ」では中庭で遊ぶ子ども達の姿に加え、入居のために荷物を運び入れる人の姿がみられました。同マンションは築50年経過した旧日本住宅公団団地「桜上水団地」を建替えた物件で、同年9月から引渡し・入居が始まりました。建替えの検討開始から完了までにかかった期間は25年。紆余曲折しながらようやく建替え完了に至った経緯をご紹介します。

その他

女性達の要望の声がきっかけ

桜上水ガーデンズ(団地の桜)

桜上水団地は1965(昭和40)年、当時の日本住宅公団(現・都市再生機構)によって整備された大規模団地です。敷地面積約4.8haに17棟(4~5階建て)・404戸が入居しました。近隣には日大文理学部や区立中学校などがあり、特に町名にちなみ桜が多く植栽されたことから、春になると団地全体が桜色に染まり、わざわざ遠方から花見に訪れる人もいました。

竣工から20年が経過した頃、同団地では専有・共用設備の老朽化が進み、大規模修繕の必要性に迫られていました。居住者の高齢化によりエレベーターの設置を望む声や、手狭な居室(1戸当たり58~66㎡)に対する拡張ニーズなども増えていったといいます。そこで1986(昭和61)年11月、女性6人が「建替えを望む会有志」として、建替えに向けた意見交換・賛同を呼びかける意見書を発表。これが桜上水団地の建替えに向けた最初の一歩でした。

10年かけて検討し正式に建替え決定

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公団側からの改修の提案もあったことから、管理組合理事長などの有志が改修・建替えの必要性を検討するための勉強会をスタートし、1989(平成元)年6月に管理組合理事会と諮問機関(理事長経験者含む委員5人を選任)による「桜上水団地の将来を考える会」を立ち上げました。その後メンバーを拡大させながら検討を進め、1998(平成10)年に「建替基本計画委員会」(委員21人選任)を正式に発足し、翌年コンサルティング会社として日建設計と日建ハウジングシステムを選定。2001年(平成13)年に修繕委員会が耐震診断を実施。翌2002(平成14)年に事業協力企業としてデベロッパーから野村不動産・三井不動産の2社、2003(平成15)年にゼネコンから大林組・清水建設が承認され、事業に参画することになりました。

「桜上水団地の将来を考える会」の立ち上げからここまで10年以上かかった理由は、管理組合理事を含めた委員会メンバーの入れ替わりがあり、その都度方向性を調整する必要があったり、一時は建替えではなく、一番要望が高かったエレベーターの増築を検討する意向が強かったためとのことです。コンサルティング会社選定後は、建替え・大規模改修のいずれかで協議を進めた結果、①築30年以上経過しているため給排水設備の老朽化が激しいが、改修と新設でコストの差がないこと、②ニーズが高いエレベーター設備設置スペースを確保できないこと、③耐震性が劣ることなどの指摘を受け、最終的に建替え計画として取り組むことを決定しました。

計画見直し、3回目の建替え決議で成立

【160224最終】桜上水団地・建替えまでの経緯

機運の高まりから企業選定までじっくりと状況を把握・研究しながら準備を進めた管理組合。すでに築35年となり設備の老朽化が深刻になり始めていたことから、急いで計画を進めていく必要性が生じました。設計事務所やデベロッパーの担当者と、施工方法や工事金額、建替え中の仮住居などについて協議を重ね、2005(平成17)年に基本構想を策定し1年かけて居住者(全体・棟別)への説明を行いました。並行して実施した意向調査では入居する住戸に関する問い合わせも多かったため、住戸選定方法についてもコンサルティング会社・デベロッパーの担当者と協議を重ねました。

一方、建替え事業を行なううえで法律上の課題となっていたのは、都市計画法の一団地の住宅施設を廃止することでした。これについては関係法令の法改正がなされるとともに、世田谷区と協議を重ね、一団地の住宅施設を廃止すると同時に、新たに地区計画を設定することになり、2005年(平成17年)にそれまで桜上水団地一帯に設定されていた都市計画法による一団地の住宅施設が廃止され、地区計画等の都市計画が決定しました。地区計画の内容として、従前の児童公園面積以上の地区施設等の整備、建築基準法以上の斜線制限を敷地全方位に設定、避難上有効な空地の確保、周辺道路の整備などが定められました。

準備を重ねて迎えた2006(平成18)年4月の建替え決議総会でしたが、全体では賛成が81.9%だったものの、もう一つの成立要件の各棟2/3以上の賛成が3棟で不足しており決議は不成立。その後実施した第2回目(2007年12月)も不成立。すでに築40年以上経過し耐震面でも危険性があったことから、管理組合理事メンバーは反対する権利者に対し、①耐震性がぜい弱なこと、②建替えにより各棟にエレベーターが設置できること、③従前権利者は追加負担なく新マンションに入居できることを地道に説明しました。そして2009(平成21)年9月の建替え決議にてようやく成立に至りました。その後2010(平成22)年に建替組合設立が認可され、2011(平成23)年7月に権利変換計画認可、同年8月には権利変換期日を迎え、団地建物が建替組合所有になったことから管理組合は解散し、権利者は仮住居に転居しました。ただし、解体工事に着手するのはそれから2年後となってしまいました。

「融和の心が大切」と痛感

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2年のブランクの理由は、建替えに反対する権利者らによる建替組合設立認可取り消し訴訟と、建替組合による売渡請求を拒む権利者に対する建物等明渡し訴訟があったからです。

1回目の建替え決議不成立後、管理組合理事会では反対する居住者側と数回にわたり話し合いを行いました。住居選定方法についての理解と、設備の老朽化による危険性・耐震性、高齢化が進む団地の再生に建替えは不可欠だということで説得を試みましたが、理解を得るのが難しく、結果的に裁判にまで発展してしまいました。

裁判の判決が下りるまで2年かかり、そのため着工時期も遅延、仮住まい期間は2年から4年に延長。建替組合理事で旧管理組合顧問は「できれば全員賛成という形にしたかったのが本音。協議を重ねるたびに感情的な摩擦が生じてしまった」と合意形成の難しさを嘆きます。しかし、「高い授業料を払いましたが、融和の心、協調が大切ということに気付かせてくれた。この経験は新しいマンションにも活かされると思っている」と話します。また、問題が起こるたびにコンサルタントやデベロッパー側の担当者に相談し、その都度意見・対応策を提供してもらったことから、「建替えをスムーズに行うには、親身になって対応してくれる外部アドバイザーの存在が不可欠」と指摘しています。

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次回は建替え内容と、仮住まい中のコミュニケーション方法等を紹介します。
乞うご期待!

 
概要(取材年月:2015年12月)
  • 建物名:桜上水ガーデンズ
  • 所在地:東京都世田谷区
  • 階数 :6~14階建て・8棟
  • 総戸数:878戸(非分譲住戸356戸含む)
  • 竣工年:2015(平成27)年
  • 管理形態:委託管理
  • 管理会社:野村不動産パートナーズ(株)
  • 総会開催:毎年6月
  • 役員数 :22人
  • 役員任期:2年(1年毎に半数改選予定)

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