mainView
OLYMPUS DIGITAL CAMERA

首都直下地震に備える!エレベーター閉じ込めの救出訓練を実施

普段何気なく利用しているマンションのエレベーターですが、いざ災害が起こったらどうなるか考えたことがある人はどのくらいいるでしょうか? 地震で停止したら? もしも閉じ込められたら……? 今回は、そんな不測の事態に備えてエレベーターの救出訓練を行ったマンションをレポートします。
⇒ 当マンションのほかの記事はこちら

防災・防火

マンション防災士がEV閉じ込めの危険性に警鐘

OLYMPUS DIGITAL CAMERA東急池上線石川台駅から徒歩2分の「サンマンションアトレ東雪谷」は、総戸数48戸のマンション。10月下旬に、居住者向けのエレベーター救出訓練を行いました。エレベーターの保守点検の後に行われた救出訓練は、居住者7名が参加。この10年間、毎年開催しています。

 

理事長を務めたこともあり、現在は理事会のオブザーバーとして関わりながら、“マンション防災士”として各所で講演なども行っている釜石さんは、エレベーターの救出訓練の重要性について訴え続けてきました。「マンション住まいの人は在宅避難が基本。そのためには、まず管理組合が建物の耐震化や防災マニュアルなど、ハード、ソフト両面を整えることが求められます。また、個人としては家具の転倒防止対策や在宅避難用の防災グッズなどを備える必要があるんです」と釜石さんは言います。

 

普段から多めに食材を買っておき、使った分だけ買い足すことで、常にストックを切らさないようにする「ローリングストック法」や、お米やパスタ等と水、野菜と缶詰などの食材をポリ袋に入れて湯煎する「ポリ袋調理」を提唱し、各家庭にカセットコンロの備蓄を説くなど、「自助」の啓発活動にも積極的な釜石さんですが、なぜエレベーター救出訓練がそれほど大事だとおっしゃるのでしょうか。

 

 

大阪府北部地震の教訓を生かす

OLYMPUS DIGITAL CAMERA「家具転倒防止の備えと、自宅で3日から一週間は過ごせるような備えができていれば、もしも地震で部屋のドアが開かなくなり閉じ込められても何とか生き延びることができます。でも、エレベーターはどうでしょうか? 首都直下地震などが来た場合、閉じ込められてしまう可能性があります。もちろん、エレベーターの保守会社が助けに来てくれるはずですが、広範囲でエレベーターの閉じ込めが多数発生したら、保守会社の人も手が回らないかもしれません。下手をすると、全く助けが来ないままエレベーターの中で数日間過ごすことになるのです」と釜石さんは教えてくれます。

 

国土交通省のデータ(※1)によると、地震時管制運転装置付きのエレベーターでは、基本的に震度5弱までは自動的に最寄り階に着床して扉が開きますが、震度5強以上の地震を感知すると、安全確保のためにカゴを緊急停止し運転を休止するので、閉じ込めが発生する可能性があります。実際に、2018年に起きた大阪府北部地震(最大震度6弱)では、実に約6万6千台のエレベーターが停止し、346件もの閉じ込め事故が発生。そのうち、約4割の139件が地震時管制運転装置付きだったにもかかわらずです。「うちのマンションのエレベーターは管制装置がついているから大丈夫」とは言い切れないのが現実なのです。

 

「当時ニュースにもなりましたが、大阪・梅田の38階建て商業ビルのエレベーターで男女5人が約1時間半閉じ込められたそうです。幸い時間は短かったのですが、密室に知らない人と閉じ込められたら、トラウマになりそうですよね。特にうちのような小さなマンションでは救助が後回しとなる可能性も高く、エレベーター救出訓練は絶対にやるべきだと改めて思いました」と釜石さん。今年もエレベーター保守会社に頼んで、11回目の救出訓練を開催したのです(※2)

 

訓練で当事者意識を醸成。不測の事態にも居住者同士で助け合う

訓練はOLYMPUS DIGITAL CAMERAエレベーター保守要員の指導の下に行われます。まず管理員室に機械室のカギを取りに⾏き、最上階の機械室に入って制御盤の主電源を切ります。その後、エレベーターのカゴが停止している階に移動してエレベーターのドアを開放。2人1組になって1人はドアを抑え、もう1人がカゴの中に入って中の人を救助する、という内容です。この時、カゴの中にいる人がパニックになって突然飛び出してくると危ないので、ドアを開ける際は奥に待機してもらうようにしたり、できるだけ声をかけて安心してもらうようにするなどの指導もありました。何より、参加者の皆さんに「災害時にはみんなで助け合うんだ」という当事者意識がしっかりとあることが印象的でした。

 

ただし、これらの訓練を受けたからといって、閉じ込めが発生したらいつでも救出作業を行っていいということではありません。救出を実行する条件として①保守会社と連絡が取れない、②保守員がいつ来るか不明、➂閉じ込められた人の命の危険が迫っている、という3つの条件があり、さらに、エレベーターが停止した最寄り階から見て、カゴの下が60cm以上開いてしまっていたら、お互いにとても危険なため救助はできません。

 

実際に訓練を行ってみて見つかった課題もありました。たとえば、機械室に入るためには管理員室でカギをもらう必要がありますが、管理員さんがいないときは管理員室が施錠されており、理事長や数名の理事しか管理員室への入出ができません。また、機械室のカギがどこにあるのか居住者に周知しているわけでもありません。さらに、閉じ込めが発生してカゴの中から呼び出しボタンを押すとインターホンが鳴りますが、その音は廊下からはほとんど聞こえないため、閉じ込めが発生したことに居住者が気付かない可能性もあります。

 

しかし、訓練を終えた参加者からは、「実際にやってみたことで、閉じ込めという不測の事態に慌てずに済むし、いざとなれば居住者同士で助け合うことができるのがわかって安心した」という声が上がっていました。起こりうることを予想し、課題を見つけて解決策を模索する、いいきっかけになったようでした。

 

(※1)国土交通省 住宅局 建築指導課「エレベーターの地震対策の取組みについて(報告)」参照

(※2)エレベーター救出訓練の実施指導については、各エレベーター保守会社により対応が異なります。詳しくは保守会社へお問い合わせください。

 

概要(取材年月:2020年10月)
  • 建物名:サンマンションアトレ東雪谷
  • 所在地:東京都大田区
  • 階数 :10階建て
  • 総戸数:48戸
  • 竣工年:1997(平成9)年
  • 管理形態:全部委託
  • 管理会社:(株)長谷工コミュニティ
  • 総会開催:毎年10月
  • 役員数 :6名
  • 役員任期:1年(輪番制)

マンションライフをサポートする関係団体(リンク)