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★新宿第二ローヤルコーポ181103セミナー配布資料

管理不全寸前だった自主管理のマンションが区の無料相談から再生にいたるまで【後編】

新宿の一等地に建つ築47年のマンション「新宿第二ローヤルコーポ」は、総戸数48戸、自主管理のマンションです。古く実情に合わない管理規約、安すぎる管理費(当時は自治会費)、半数近くが物件を賃貸に回している外部所有者であるために生じる管理者の負担、建物の老朽化による漏水事故など、様々な問題を抱えているマンションであることは、前回ご紹介した通りです。

その他

専門家による調査診断の結果は……

2修繕委員会を立ち上げた小畑さんが中心となり、区が取り組む無料のマンション相談会などに顔を出し続けた新宿第二ローヤルコーポ。2014年には、各種専門家に建物診断などをしてもらうことが決まりました。区に派遣してもらったマンション管理相談員で設備設計一級建築士のYさんには設備調査を、耐震アドバイザーとして派遣してもらったNPO法人耐震総合安全機構(JASO)の一級建築士Eさんには耐震診断と建物診断をお願いすることになりました。

 

調査診断の結果は、想像以上に散々なものでした。屋上防水の機能不全、給水タンク・受水槽の衛生面に大きな問題、排水管の劣化、浴室防水の劣化、バルコニー床防水の著しい劣化にともなう鉄筋爆裂、アルミサッシや玄関扉の劣化と気密性不足、開閉時の騒音等々……。さらに、耐震診断の結果はIs値が低く耐震補強工事が必要、とのことでした。まったく想定もしていなかった耐震改修も必須工事のひとつとなってしまったのです。

 

 

課題山積の改修工事は、規約も管理費も改訂して二段構えに

3診断結果を受けて管理組合では、2名のアドバイザーに建物改修の支援を正式に依頼します。これでやっとマンションの再生プロジェクトが始動したのです。JASOの構造の専門家もアドバイザーとして迎え、まずは工事の優先順位を決めるところから始めました。最も急いで着手しなければならないのは、屋上の漏水を止めること、衛生面に問題があると指摘された飲み水の安全性を確保することでした。

 

課題が山積していることから、まず屋上防水と給水設備の工事をやり、次に耐震改修工事などを行う二段構えの優先改修工事を計画。その際に壁となって立ちはだかったのは、資金の問題でした。段階的に値上げをし、当時6,000円となっていた管理費をさらに7,000円値上げし、13,000円に改定。1期工事は何とか手元資金で賄えたものの、2期工事の資金は足りなかったため、物理的に我慢できる工事は先送りをする、補助金を有効活用する、それでも足りない分は借りる、ということになりました。住宅金融支援機構から借入れをするには要件を満たす規約が必要だということで、新宿区マンション管理相談員のマンション管理士と契約を結び、管理規約も改訂しました。

 

さらに、2期目の改修では借入れが必要となったため、借入れの要件に合わせて、2017年に管理費と修繕積立金を分離し、管理費500円、修繕積立金12,500円としました。管理費と修繕積立金のバランスが極端なのは、修繕積立金の徴収額を、借入れ可能な金額にするためです。

借入れの手続きなどは、建築士とマンション管理士に書類の作成から借入機関への同行まで全面的に支援をしてもらったため、管理組合や修繕委員の負担は少なくて済んだそうです。

 

管理費と修繕積立金あわせて13,000円とは、管理協力金4,000円を足しても周辺の相場に比べればずいぶん安いのですが、元々の徴収金がかなり安かった分抵抗もあり、それ以上の値上げはできなかったそうです。「分譲時から管理費・修繕積立金の設定がなく、それらに充てていた自治会費も金額が低すぎたことが“諸悪の根源”だった」という小畑さん。再生プロジェクトにかかわった歴代役員と委員が、値上げを含め工事の進め方などに関しても、説明会を何度か開催し、合意形成に向けて努力をしたそうです。

 

工事の最中に違法民泊が発覚! 専門家のアドバイスをフルに活用

第1期屋上防水と給水設備の工事は2015~16年に実施。地下受水槽と屋上にあった高置水槽は廃止して、増圧直結方式へと改変。給水管もステンレス鋼管に変更しました。続く第2回目の工事は耐震補強と外構のほか、建物内の排水管をすべて取り替えました。もともと専有横引管が床スラブ下にあったものを、すべてスラブ上に変更して取替え、合わせて、浴室防水改修やユニットバス化など、専有部への立ち入りが必要な工事も行いました。

耐震化については、構造の専門家によると1、2階の3戸分の外壁を増し打ちし、数か所の外壁に耐震スリットを入れることで解決するとのことで、それほど大きな負担にならなかったのは幸いでした。

 

しかし、全戸一斉の排水管の交換と浴室防水改修・ユニットバス化については、一苦労ありました。というのも、ある住戸を取得した買取再販業者が、リノベーションを施したうえで売却するというのです。「これから排水管の更新工事をするから浴室のリノベは二重投資になる」と管理組合から再三忠告したものの、業者はリノベを強行し、外国人に転売。その後、キャリーバッグを持った外国人が当該住戸に入っていくのをたびたび目撃したり騒音があったりと、民泊と疑わしい点が多々あったため「もしや……」と民泊Webサイトを確認してみると、案の定、該当住宅を発見。すぐに民泊住戸の管理会社(海外法人の日本支社)に民泊中止を申し入れるも聞き入れられず、新宿区衛生課環境衛生係に調査を依頼しました。そんな中で、当該住戸で漏水事故が発生。原因を調べてみると、民泊ゲストが風呂に湯を張っている最中に寝てしまったことで起きた事故だったのです。

その後、マンション管理士に作成してもらった民泊中止要請文書を管理会社に送るなどして対応したところ、違法民泊は中止となり、何とか改修工事も実施することができたそうです。

 

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「工事の途中にも、外国籍の居住者宅で足場を利用して侵入される窃盗事件が発生するなど、本当にいろいろあって大変でしたが、専門家の方々の知見のおかげですべて無事解決し、ハード・ソフト両面でグレードアップすることができました」と小畑さん。場所がら外国籍の居住者も多いので意思の疎通がむずかしかったり、先送りにした改修工事もあるため、まだまだ課題は多いそう。しかし、顧問マンション管理士の協力により理事会運営の継続性が確保され、若い世代の理事が積極的に動いてくれるため、見通しは明るいそうです。

 

無料相談から始まった専門家の活用。現在は建築士・マンション管理士と顧問契約を結び、的確なサポートを受け、日々の管理のプレッシャーから解放されたとのこと。耐震改修も終え、「これで安心して暮らせる」と住人からも安どの声が上がっているそうです。

 

概要(取材年月:2019年03月)
  • 建物名:新宿第二ローヤルコーポ
  • 所在地:東京都新宿区
  • 階数 :地上5階建て
  • 総戸数:48戸
  • 竣工年:1973(昭和48)年
  • 管理形態:自主管理
  • 管理会社: -
  • 総会開催:毎年6月
  • 役員数 :4名
  • 役員任期:2年(輪番制、半数改選)

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