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1花壇手入れ

「今のマンションを長持ちさせよう!」住人が立ち上がり発足させた“100年委員会”

マンションが築年数を経てくると、大規模修繕だけでなく耐震化や建て替えなどが話題に上ります。その時に、「今あるマンションをどれだけ長持ちさせられるか」という視点はとても大事なものです。自分たちの住むマンションの今後を見据え、「100年委員会」という会を立ち上げたマンションを取材しました。

シニアライフその他

36期理事会の反省会で……。

P1200002JR「王子」駅から徒歩10分、幹線道路から少し入った閑静な場所に、白い外壁に緑の屋根のマンションが建っています。落ち着いた雰囲気のマンション、といった風情のその建物は、「コーシン王子マンション」。築43年を迎えた、全101戸のマンションです。

 

それは、年月を経るなかで給排水管の更新や大規模修繕などを無事に済ませ、第36期の理事会が終わろうとしていた反省会での出来事でした。「うちのマンションももう36年経つのか。そろそろ建て替えを検討しなくちゃね」。誰ともなく言い出したこのひと言から、がぜん話が白熱し出したのです。

 

「建て替えっていくらぐらいかかるのかな?」「みんな戻ってこられるの?」「少なくとも2年は別のところに住まなきゃいけないんじゃない?」「新耐震で建てられたマンションじゃないし、耐震強度も心配だよね」「合意形成って大変なんじゃないの?」……。喧々諤々の議論のなか、「マンションって100年持つといわれていますよね」という声が。住み慣れた愛着のあるマンション、今あるこの建物を長持ちさせることを考えた方がいいのでは?という意見が出て、「それならそういうことを考える会をつくろう」と話がまとまりました。

 

その時できたのがコーシン王子マンション「100年委員会」。委員会と名前を付けましたが、だれでも参加できる任意の団体で、理事会にも属していません。区分所有者だけでなく、賃貸住まいの住人の参加も自由な委員会としました。複雑な縛りをなくし、できる範囲で“マンションを長持ちさせる”ための活動を積極的に行う、住人による住人のための団体が誕生したのです。

 

防災やコミュニティに寄与する委員会の活動内容とは?

100年委員会委員会の主要メンバーは、第36期の理事会メンバーを中心に、これまで理事を経験してきた住人など10名ほど。その中には、マンション管理士として仕事をしている住人なども含まれています。委員会が発足し、記念すべき第1回の活動は2012年4月。住人を集めて委員会の設立趣旨を説明するとともに、マンションの歴史を紹介しました。

 

「マンションができてからずっと住み続けている人もいれば、比較的新しい住人もいる。マンションが今まで歩んできた歴史を知ってもらうことで新住人にも愛着を持ってもらうのと同時に、マンションの建つ場所の地理的な知識も理解してもらいたかった」と、委員会メンバーの榎本さんはいいます。

 

というのも、北区は武蔵野台地の北縁部に位置しており、京浜東北線の西側は地盤がしっかりしていますが、コーシン王子マンションが建つのはその下手で、かつて水田が広がっていた土地のため地盤が緩く、地震にそなえてしっかり防災対策をしておく必要がある、ということを伝えたかったからです。

 

それ以降も様々な活動をしていて、北区の防災センター見学会やエレベーター閉じ込め救出訓練など、防災に関することだけでなく、屋上を開放しての金環日食観測会、下谷七福神めぐり、高尾山ハイキングなど、コミュニティに役立ちそうなイベントも随時盛り込んでいきました。「マンションを100年長持ちさせる」ことに関して、ハード面は当然管理組合の管轄ですが、防災やコミュニティといったソフト面は委員会が担うという意識を持って取り組んでいます。

定期的な活動も多種多様。3つの目標も掲げる

ウォーキング定期的な活動も多々あります。「ウォーキングの会」は毎週日曜日の朝8時半から。きっかけは、ある人が「健康のために毎日周辺を歩いている」といったことでした。みんなでマンション前からスタートしますが、途中どこで折り返してもよく、自由参加・自由解散です。石神井川沿いは絶好の散歩スポット。毎回数名から10数名ほどの参加者がいます。

 

毎年8月の第1土曜日には、板橋花火大会が開催されます。2010年からはこの花火大会に合わせて屋上を開放し、みんなで花火を鑑賞する催しも始めました。当日は委員会を中心に、管理組合の理事たちも一緒に準備をします。焼鳥屋をやっている住人が無償で焼き鳥を提供したり、かき氷の道具を借りてきてふるまったり、子どもたち向けのくじ引き大会を開いたりと、大人も子どもも楽しみにしているイベントになっています。

 

 

 

 

 

外観と花壇また、花壇を整備したいとの声を受けて「花と緑の会」も立ち上げました。四面が道路に接道しているコーシン王子マンション。その周囲をぐるりと囲む花壇の一部を、住人有志が管理しています。2014年には北区と「みどりの協定」を締結し、年2回、花苗や肥料などの支給を受けています。近所でお金をかけて花壇づくりをしている人から「お宅のマンションの花壇にはかなわない」といわれることもあるそうで、住人自慢の花壇となっているほか、街の美化にも寄与しています。

 

ほかにも様々な活動を積極的に行っている100年委員会。数年前には「①誰もが安心して、楽しく暮らすマンション ②花と緑に囲まれた、きれいなマンション ③皆が元気にあいさつするマンション」という、マンションの3つの目標を定めました。どれもとてもシンプルな内容ですが、この中にはマンションの維持管理・防災・コミュニティといった、マンションを長持ちさせるためには欠かせない要素が盛り込まれています。「3つの目標を決めてから、マンションの環境も住人同士の関係も確実に良くなってきた。目標を掲げることはとても大事です」と榎本さん。実際、マンションに空き室が出るとすぐに近所の人が入居してくるほど、地元でも人気のマンションとなっています。

 

☆☆☆

次回は、耐震補強工事実施に至る経緯と、合意形成の図り方についてお伝えします。

 

To Be Continued.

概要(取材年月:2018年01月)
  • 建物名:コーシン王子マンション
  • 所在地:東京都北区
  • 階数 :10階建て
  • 総戸数:101戸
  • 竣工年:1975(昭和50)年築
  • 管理形態:全部委託
  • 管理会社:ハイネス管理(株)
  • 総会開催:毎年11月
  • 役員数 :13名(うち4名が修繕委員)
  • 役員任期:輪番制2年、修繕委員のみ任期なし

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